未経験からの農業の始め方

未経験でも農業はできる?難しいところは?
結論から言うと、未経験から始める人は多く、機械や支援制度が経験の差を埋めてくれる場面も増えています。ただし、農地・資金・技術の3つをそろえるのは簡単ではありません。
できると言える理由
初期費用は、作物や規模、機械を買うか借りるかで大きく変わります。費用シミュレーターで道具の組み合わせごとの初期費用を試算したり、買わずに始める方法を確認したりできます。
01いま、未経験者に道が開けている理由
農業を支えてきた世代が引退期を迎え、担い手は大きく減っています。一方で法人経営や雇用は増え、非農家出身の人が農業に入る流れができています。
2025年農林業センサスで、基幹的農業従事者(個人経営体)に占める65歳以上の割合は69.6%、平均年齢は67.7歳。49歳以下は29歳以下1.2%、30~39歳3.8%、40~49歳7.5%にとどまる。
※構成比は出典の表10による。
出典:農林水産省 2025年農林業センサス報告書 調査結果の概要(表10・図10 年齢別基幹的農業従事者数)(2026-03-31(確定値公表))
2025年農林業センサス(確定値)によると、個人経営体の基幹的農業従事者(自営農業を主な仕事としている世帯員)は103万6千人で、5年前に比べ32万7千人(24.0%)減少した。
※2025年2月1日現在。概数値(2025年11月公表)と確定値(2026年3月公表)で数値が異なるため、引用時は確定値を使う。
出典:農林水産省 2025年農林業センサス報告書 調査結果の概要(農林業経営体調査)(2026-03-31(確定値公表))
2025年農林業センサスでは、農業経営体は83万6千経営体で5年前より22.3%減少した一方、法人経営体は3万4千経営体で10.1%増加し、農業経営体の常雇い数は24万2千人で5年前に比べ54.4%増加した。
※常雇いとは農業に年間7か月以上の契約で雇った人。法人に雇用されて農業を始める道が広がっていることを示す数値。
出典:農林水産省 2025年農林業センサス報告書 調査結果の概要(農林業経営体調査)(2026-03-31(確定値公表))
農林水産省の資料によると、農業法人等に雇われる形で就農する新規雇用就農者は平成27年(2015年)以降1万人前後で推移し、令和7年は年齢別で40代以下が約7割、出身別では非農家出身者が約8割と多数を占める。
※資料中の図では、令和7年の新規雇用就農者1万250人のうち非農家出身は8,610人(84%)と示されている。
出典:農林水産省 経営局就農・女性課「新規就農者の育成・確保について」(2026年8月(令和8年8月))
02テクノロジーが「経験の差」を縮めている
国の実証では、熟練者でなくても熟練者に近い精度で作業できた例や、大幅な省力化の例が報告されています。
東北農政局が紹介するスマート農業実証(岩手県岩手町の土地利用型野菜経営)では、自動操舵補助システムの導入で、これまで従事できなかった作業に「熟練者並みの精度」で従事できるようになり、非熟練者の手動作業に比べて重複作業や耕起漏れが見られなかった。経営モデルでは、慣行と比べ経費は7%増えるが、全体の収入は8%増、労働費は10%減、利益は110%増とされた。
※既存の大規模経営(約90ha)の実証結果。経営モデルは実証経営体の規模を前提とした試算で、小規模な新規参入にそのまま当てはまるものではない。
東北農政局が紹介する福島県南相馬市の水稲大規模経営の実証では、直進キープ機能付き田植機等の活用で非熟練従業員が熟練者と同水準の作業効率を発揮できた。ほ場水管理システムの導入により、熟練者2名で行っていた水管理を非熟練者1名で行えるようになった。
※田植機の平均旋回時間は熟練者15秒、非熟練者22秒で、旋回径も非熟練者は平均25cmほど大回りする傾向があった(回数を重ねて上達)。直進部分は機械が補助しても、旋回などの操作は経験で差が残る。
同実証(令和2年度第1次補正)では、主要な技術でみると農薬散布ドローンで平均91%、野菜自動収穫機で平均43%の労働時間削減効果があった。
※野菜自動収穫機は生育揃いが良好でない圃場で収穫ロスが出やすく、栽培管理技術の高度化が必要とされた。自動運転トラクタや乗用管理機は小区画圃場で削減効果が低い傾向があり、圃場の大区画化等の基盤整備が必要とされている。
出典:農林水産技術会議事務局「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証の結果について」(2021年8月(令和3年8月))
同実証に参加した生産者からは「自動操舵トラクタ等は新規就農者や女性農業者でも簡単に、かつ、満足な精度で作業できた」「作業管理ツールは70歳以上の従業員もスマートフォンで毎日問題なく使いこなせた」との声が寄せられた。全ての実証地区で農業高校生・農業大学校生等がスマート農機の操作等をOJT形式等で実習し、実習を契機とした新規就農にもつながった。
※参加者の感想であり、定量的な比較評価ではない。
出典:農林水産技術会議事務局「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証の結果について」(2021年8月(令和3年8月))
農研機構は、農業データ連携基盤WAGRIを通じて「病虫害AI画像診断API」を民間事業者向けに提供している。都道府県の協力で収集した約70万枚の画像をもとにした第一弾の判別器の精度は、トマト病害81.2%、イチゴ病害89.2%、キュウリ病害72.6%、ナス病害73.3%、虫害は82.1~85.4%と示されている。
※第一弾の精度は他県の画像を使った実運用に近い条件での検証値。第二弾(ジャガイモ、ピーマン等)は97.8~99.2%とされるが、10分割交差検証による値で「実運用精度はこの値よりかなり低い」と注記されている。農家はAPIを直接使うのではなく、これを組み込んだ民間アプリ等を通じて利用する形。
出典:農研機構 農業情報研究センター「WAGRI病虫害AI画像診断API」報道機関向け勉強会資料5(2023-06-01)
農林水産省は、熟練農業者の経験や勘に基づく高度な技術「匠の技」をICTで「見える化」して学習システムとして提供することで、高度な技術の継承や新規就農者の技術習得の早期化が期待されるとして、水稲、みかん、ぶどう、りんご、キウイフルーツ、トマト、ピーマン、いちご、アスパラ、有機野菜の学習システム等を紹介している。
※「期待される」という位置づけで、習得期間がどれだけ短縮されるかの定量的な記述はページ上にない。
03ただし、道具だけで経営は成り立たない
スマート農業は作業を楽にしますが、機械代がかさんで利益が減った例もあります。独立して始める人の多くが、最初の数年は収入面で苦労しています。
全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果(令和6年度)」によると、就農からおおむね10年以内の新規参入者で「おおむね農業所得で生計が成り立っている」と答えた割合は41.3%で、前回調査(2021年)の38.1%より上昇したが、残りの約6割は農業所得だけでは生計費をまかなえていない。
※調査対象は就農後おおむね10年以内の者で、就農準備資金・経営開始資金の受給者と非受給者を含む。郵送・配付による任意回答のアンケートで、すでに離農した人は対象に含まれない。経過年数が長いほど割合は高くなるが、都府県では最も長い区分(5年目以上)でも半分程度は生計が成り立っていないとされる。
出典:一般社団法人全国農業会議所 全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-」(2025年3月)
同調査(令和6年度)で新規参入者が就農1年目に要した営農面の費用合計は平均896万円(中央値400万円)、うち機械・施設等は平均670万円(中央値300万円)。これに対し営農面の自己資金は平均278万円(中央値200万円)で、就農1年目の農産物売上高は平均354万円(中央値158万円)だった。
※作目による差が大きく、費用合計の平均は露地野菜515万円、施設野菜1,270万円、酪農4,716万円など。平均値は一部の大規模経営に引き上げられるため、中央値もあわせて見る必要がある。
出典:全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-」(表24 就農1年目の費用と自己資金)(2025年3月)
令和2年度食料・農業・農村白書によると、令和元年度スマート農業実証プロジェクトの初年度成果では、水田作の3事例すべてで労働時間が減り収量も増えたが、高額なスマート農業機械を限られた面積で実証し機械費が大きく増えたことなどから、いずれの事例でも利益が減少した。施設園芸では環境制御装置等の導入による収量増加で利益が増加した。
※初年度(中間報告)段階の結果。白書は今後の対応として、適正な最大稼働面積の見極めやシェアリング等による初期投資の軽減を挙げている。
出典:農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書」トピックス3 令和元(2019)年度スマート農業実証プロジェクト(2021年(令和2年度白書))
同成果資料の中山間地域の集落営農法人の事例では、高齢者・Uターン就農者等を中心とした人員体制でも自動操舵農機やドローンの活用で労働時間を27%削減した。一方、機械・施設費が増えたため、10a当たり利益は慣行(実証前)の13.1千円に対し、スマート農業導入後は令和元年度が-18.7千円、隣接集落と農機をシェアリングした令和2年度も-13.2千円となった。
※考察として、機器ごとの稼働面積や費用対効果を踏まえた絞り込み、賃借・受託サービスの利用、広域でのシェアリングなどの工夫が必要とされている。省力化しても、それだけで利益が出るとは限らないことを示す事例。
出典:農林水産技術会議事務局・農研機構「令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)」(代表的な実証事例③中山間 集落営農法人)(2022年8月(令和4年8月))
全国新規就農相談センターの令和6年度調査では、新規参入者が就農時に苦労したことは「農地の確保」「資金の確保」「営農技術の習得」「住宅の確保」の順に多く、報告書は農地・資金・営農技術の「3点セット」の確保が重要だとまとめている。就農地を選んだ理由(3つまで選択)は「取得・賃借できる農地があった」が49.8%で最も多く、「行政等の受け入れ・支援対策が整っていた」31.3%、「就業先・研修先があった」30.6%が続いた。
※「苦労したこと」の項目別の割合は報告書のグラフに示されているが、本文から系列を特定できなかったため、順位のみ記載。
出典:全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-」(図5、表14)(2025年3月)
農林水産省の資料によると、経営開始6年目の収入(売上)は、上位3割が約2,000万円である一方、下位3割は約200万円にとどまり、「着実な経営発展が課題」とされている。
※対象は青年就農給付金の受給者(平成24年度~平成30年度)で、経営局就農・女性課調べ。売上高であり所得(手取り)ではない。
出典:農林水産省 経営局就農・女性課「新規就農者の育成・確保について」(新規就農者の課題)(2026年8月(令和8年8月))
高額な機械は、最初から買いそろえる必要はありません。研修先や雇用先で使い方を覚える、共同利用やリース・作業委託を検討する、面積が広がってから導入する、といった順番も選べます。
04始めるまでの5つのステップ
農林水産省のハンドブックが示す流れに沿って、どこでスマート農業の道具が役立つかを整理しました。
STEP 1情報を集めて、相談に行く
まずは就農相談窓口や就農イベントへ。地域ごとの受け入れ体制や支援策は、ネットだけでは分かりません。
全国新規就農相談センターは、就農相談窓口として全国新規就農相談センターと都道府県ごとの新規就農相談窓口があり、就農イベントでは就農相談担当者との面談や農家の体験談、就農したい地域の詳細情報を得られるとして、「まずはお近くの就農相談窓口・就農イベントへ足を運んでみること」を勧めている。
就農情報ポータルサイト「農業をはじめる.JP」は、農林水産省補助事業(農業人材確保推進事業)として全国新規就農相談センター(一般社団法人全国農業会議所)が運営し、就農を知る・研修・体験・相談・求人・支援情報を一元的に掲載している。全国および各都道府県の新規就農相談センターや「農業経営・就農支援センター」で就農相談を受け付けている。
※全国新規就農相談センターの問い合わせ先はTEL 03-6910-1133(農林水産省資料記載)。
出典:農林水産省 経営局就農・女性課「新規就農者の育成・確保について」(2026年8月(令和8年8月))
農林水産省の資料によると、令和8年度の就農相談会「新・農業人フェア」は7月18日(東京交通会館)、9月13日(グランキューブ大阪)、9月23日(東京国際フォーラム)、11月15日(東京ビッグサイト)、1月30日(歌舞伎座タワー)に開催予定で、全国から200以上の農業団体が出展する。
※2026-10-04時点で、残りは11月15日と1月30日の回。日程は変更される可能性があるため公式サイトで確認が必要。
出典:農林水産省 経営局就農・女性課「新規就農者の育成・確保について」(農業を始めたい方への支援施策)(2026年8月(令和8年8月))
STEP 2体験してみる
1日単位の農業アルバイトや農泊で、作業と暮らしを確かめます。
同ハンドブックは、労働力募集アプリを使った1日単位の農業アルバイトが全国で広がっているとして、アルバイトから農業を始めることも紹介している。利用者が良かった点として「隙間時間に働ける」(66%)や「農作業経験がなくてもできる仕事が多い」(52%)などが挙げられている。
※数値は「労働力募集アプリ」導入ハンドブック(N=3,787、複数回答)からの引用として掲載されている。体験の場であり、就農そのものではない。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026」(農業アルバイトをしてみたい)(2026年版)
STEP 3研修で技術を身につける
農業大学校や農業法人、研修農場で学びます。ここで営農管理アプリを使い、作業を記録する習慣をつけておくと、独立後の振り返りや相談に役立ちます。
同ハンドブックは、独立の前に農業法人で従業員として働きながら生産技術、加工販売、経営管理などのノウハウを学ぶことも有効だとしている。就農希望地の農業法人で働いて地域の人間関係を築くことで、独立・自営就農に役立つ情報が手に入る場合もあるとし、市町村やJA等が開設する研修農場(トレーニングファーム)も紹介している。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026」(農業法人などで研修を受けたい)(2026年版)
道府県立の農業大学校は全国41道府県に設置されている。中心となる「養成課程」の標準的な履修時間は2年間2,400時間(80単位)以上で、全国で毎年約2,000人が入学している。
※社会人向けの短期研修など、養成課程以外の課程もある。学校ごとに入学要件や募集時期が異なる。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026(農業を始める前にまずこの1冊!)」(2026年版)
就農準備資金は、道府県農業大学校や先進農家等で研修を受ける場合に、研修期間中に月13.75万円(年間最大165万円)を最長2年間交付する。交付対象は就農予定時に49歳以下の者で、都道府県等が認めた研修機関等で概ね1年以上かつ概ね年間1,200時間以上の研修を受けること、原則として前年の世帯所得が600万円以下であることなどが要件。
※研修終了後1年以内に49歳以下で就農しなかった場合や、就農後に交付期間の1.5倍(最低2年間)農業を継続しない場合などは返還となる。申請前に交付主体(都道府県等)への相談が必要。
出典:農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」/就農準備資金・経営開始資金PR版(令和8年度)(令和8年度当初(新規就農者育成総合対策))
STEP 4計画を立てて、農地と資金を確保する
青年等就農計画を作って市町村の認定を受けると、資金や農地の支援を受けやすくなります。
青年等就農計画の認定は、新規就農者が「青年等就農計画認定申請書」を作成して市町村に申請し、市町村が審査・認定して申請者に通知し、その後は市町村・都道府県等の関係機関が計画達成をフォローアップする流れ。農林水産省は、申請様式を作る前に都道府県(普及指導センター)や市町村等に相談するよう求めている。
※同ハンドブックでも「あらかじめ就農予定地の市町村に『新規就農』について相談」することが最初のステップとして示されている。
農地探しについて、農林水産省のハンドブックは、各都道府県の農地中間管理機構(農地バンク)、市町村ごとの農業委員会、農地情報をインターネットで確認できる「eMAFF農地ナビ」を案内している。農地中間管理機構と新規就農相談センターが連携し、就農希望者の条件に合う農地をあっせんする仕組みもある。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026」(農地を探したい)(2026年版)
認定新規就農者制度は、新たに農業を始める人が作成する「青年等就農計画」を市町村が認定し、その計画に沿って農業を営む人に支援措置を重点的に講じる制度。対象は原則18歳以上45歳未満の青年、特定の知識・技能を有する65歳未満の中高年齢者、これらの者が役員の過半数を占める法人で、経営開始から5年を経過しない者も含む。
※経営開始資金などの資金は別途「49歳以下」の年齢要件があるなど、制度ごとに年齢要件が異なる。
STEP 5独立して、必要な機械を入れる
経営開始後の資金や機械導入の支援があります。面積や作目に合わせて、自動操舵やドローンなどを無理のない規模で検討します。
経営開始資金は、独立・自営就農時に49歳以下の者に、経営開始から最大3年間、月13.75万円(年間165万円)を交付する。認定新規就農者であること、経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画であること、目標地図に位置付けられる(または農地中間管理機構から農地を借りている)こと、原則として前年の世帯所得が600万円以下であることなどが要件。
※交付期間終了後、交付期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合等は返還となる。交付主体は市町村。
出典:農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」/就農準備資金・経営開始資金PR版(令和8年度)(令和8年度当初(新規就農者育成総合対策))
経営発展支援事業(令和8年度当初)は、49歳以下の認定新規就農者による機械・施設等の導入(機械・施設、家畜導入、果樹・茶の新植・改植、機械リース等)を支援し、通常枠の支援額は国費上限500万円(経営開始資金の交付対象者は上限250万円)、国の補助上限は1/2。都道府県が支援する場合に、都道府県支援分の2倍を国が支援する仕組み。
※本人負担分について金融機関から融資を受けていることが要件。取組計画に応じた事業採択方式で、申請すれば必ず採択されるものではない。
出典:農林水産省 新規就農者育成総合対策のうち経営発展支援事業 PR版(令和8年度)(令和8年度当初)
日本政策金融公庫の青年等就農資金は、認定新規就農者が青年等就農計画の達成に必要な施設・機械等の資金を借りられる制度で、融資限度額3,700万円(特認1億円)、返済期間17年以内(うち据置期間5年以内)、お借入の全期間にわたり無利子。
※農地等の取得は対象外(認定新規就農者が農地を取得する場合は有利子の経営体育成強化資金が案内されている)。市町村を事務局とする特別融資制度推進会議の認定を受けた事業に限られ、予算の範囲内で実施される。あくまで融資なので返済が必要。
農林水産省のハンドブックは、農業の始め方を「自分で起業」「農業法人などに就職」「経営を継ぐ」の大きく3通りと説明している。自分で起業する場合は「技術の習得、資金の準備、農地や設備の確保など、かなりの準備が必要」とされ、農業法人などへの就職は働きながらスキルを身につけ将来独立するルートもあるとしている。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026(農業を始める前にまずこの1冊!)」(2026年版)
同ハンドブックの「農業を始めるまでのステップ」は、情報収集(農業をはじめる.JP、就農相談)→体験・研修(農泊、農業大学校、農業法人、自治体やJA、トレーニングファーム)→独立準備(認定新規就農者になる、資金調達、農地を探す、住宅を探す)→独立(経営開始時の資金支援、機械・施設の導入支援など)という流れで支援施策を整理している。
※雇用就農(農業法人で働く)の場合は、体験・研修の段階から求人探しに進むルートとして別に示されている。
出典:農林水産省「新・農業人ハンドブック2026」目次「農業を始めるまでのステップ」(2026年版)
05使える支援制度
研修中・独立直後の資金、機械導入の補助、無利子の融資などがあります。要件や金額は年度で変わるので、必ず窓口で確認してください。
就農準備資金・経営開始資金は、旧「農業次世代人材投資資金」(準備型・経営開始型)にあたる資金。令和7年8月の農林水産省資料では「年間最大150万円」と記載されていたが、令和8年度当初の農林水産省ページ・PR版では月13.75万円(年間最大165万円)となっている。
※過去の記事やパンフレットには旧名称や「年150万円」の記載が残っているため、最新の金額は農林水産省のページや交付主体で確認する必要がある。
出典:農林水産省「就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)」ページ/「新規就農をめぐる現状と課題」(令和7年8月1日)(令和8年度当初(比較対象の資料は2025-08-01))
令和6年度の就農準備資金等の交付対象者は1,336人、経営開始資金等の交付対象者は8,864人で合計10,200人。このうち令和6年度に新たに採択された人は就農準備資金823人、経営開始資金1,741人。非農家出身の割合は就農準備資金等で66%、経営開始資金等で69%だった。
※経営開始資金等には旧農業次世代人材投資資金(経営開始型)等を含む。
出典:農林水産省「令和6年度就農準備資金・経営開始資金、農業次世代人材投資事業等の交付実績について」(2026年3月(令和8年3月))
全国新規就農相談センターの令和6年度調査によると、新規参入者が利用した公的支援措置は「助成金・奨励金(費目・使用目的の限定なし)の交付」82.5%、「農地のあっせん・紹介」52.0%、「研修の支援助成」47.7%、「機械・施設の取得に対する助成」45.4%など。40歳代以下では助成金・奨励金の利用が過半数だが、50歳代は32.3%、60歳以上は18.2%と低い。
※回答者には資金受給者が多く含まれる調査設計のため、新規参入者全体の利用率とは異なる可能性がある。
出典:全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-」(表16)(2025年3月)
農林水産省によると、令和5年度に就農準備資金・経営開始資金関係の支援を終えた就農者のうち、支援終了から1年後(令和6年度末)時点で就農を継続している人の割合(定着率)は、全国で準備資金関係95.6%、開始資金関係98.7%だった。
※資金の受給者だけを対象にした支援終了1年後の数値で、新規就農者全体の定着率や長期の離農率ではない。都道府県によっては準備資金関係が50%(鳥取県)、70%(島根県)など低いところもある。
出典:農林水産省「令和6年度の都道府県別定着率について」(令和6年度実績(公表日の記載なし))
このページの数値・記述は、農林水産省・地方農政局・農研機構・全国農業会議所・日本政策金融公庫などの公表資料をもとにしています(2026年10月4日確認)。制度の内容は変わることがあるため、最新情報は各出典をご確認ください。