スマート農業比較ナビ
17事例

スマート農業の公的な事例

「未経験でも本当にできるのか」「費用は見合うのか」。国の実証などの公的な資料から、事例を作物ごとにまとめました。うまくいった点だけでなく、費用が増えた点や条件も、資料に書かれたとおりに載せています。
畑で先輩に教わりながら苗を植える新人

事例を読むときの注意

水稲

水稲高齢者中山間

中山間の集落営農で、自動操舵とドローンを導入

組合員73名・オペレーター2名の中山間の集落営農法人(水田4.2ha、小麦3.1ha、水稲基幹作業受託9.3ha)(令和元〜2年度)

小さな田んぼが多い中山間地で、高齢者やUターン就農者が中心の体制でも、自動操舵の農機やドローンで労働時間を約27%減らせました。一方で機械費が大きく増え、10a当たりの収支は赤字になりました。機械を全部そろえるより、借りる・委託する・必要な所に絞るといった工夫が大切だと報告されています。

導入した技術:自動操舵トラクタ、直進キープ田植機、防除用ドローン、食味・収量コンバイン、田植機・コンバインの隣接集落とのシェアリング

総労働時間(10a当たり)
24.8時間→18.2時間(約27%減)
単収(10a当たり、作況補正済み)
490kg→541kg(令和2年度)
機械・施設費(10a当たり)
11.7千円→56.8千円(令和元年度)→50.0千円(令和2年度、シェアリング後▲12%)
利益(10a当たり)
13.1千円→-18.7千円(令和元年度)→-13.2千円(令和2年度)

注意:労働時間は減ったが、機械費の増加で10a当たり利益は実証前の13.1千円から赤字(令和2年度-13.2千円)に。資料は、非使用時期に隣接経営体へ貸す簡易なシェアリングでは効果が限定的とし、ドローン等の利用時間の短い機器は賃借や受託サービスの利用、自動水管理システム等は遠隔圃場等に限定するなど、機器ごとの稼働面積や費用対効果を踏まえた絞り込みが重要としている。

出典:令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)(農林水産技術会議事務局・農研機構)(2022年8月)

水稲

家族経営の大規模稲作で、自動運転農機と収量データを活用

家族3名+常時雇用1名・臨時雇用2名の家族経営(経営面積65.2ha、うち主食用水稲38.6ha・新規需要米26.6ha)(令和元〜2年度)

家族中心の大きな稲作経営で、自動運転の農機を使い、忙しい春の代かき・田植を18%省力化しました。収量データをもとに肥料の配分を見直し、肥料を減らしながら収量も上がりました。ただし実証した面積が小さかったため機械代が重く、10a当たりの利益は大きく下がっており、元を取るには機械を広い面積で使い切ることが前提になります。

導入した技術:自動運転トラクタ、自動運転田植機、収量コンバイン、営農管理システム

代かき・田植作業の労働時間
18%省力化
総労働時間(10a当たり)
11.1時間→10.7時間(▲3.6%)
単収(10a当たり)
471kg→517kg(施肥量は5%低減、収入10%増大)
利益(10a当たり)
38.4千円→5.5千円(導入機械の稼働可能面積53haでの試算では48.0千円)

注意:実証時はスマート農機の導入面積が小さく、機械・施設費が10a当たり13.7千円→59.2千円と高額になり、利益は大きく減った。導入機器の能力を最大限使い切る規模(53ha)まで使う試算では機械費は慣行の2割増の水準に下がり、慣行より利益拡大が可能(+1万円/10a)とされる。ただし試算はコシヒカリでの収支で、実際には業務用品種や新規需要米も組み入れるため経営全体の収入・利益はこれより低位と注記されている。

出典:令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)(農林水産技術会議事務局・農研機構)(2022年8月)

水稲雇用者

従業員を雇う稲作法人で、営農管理アプリと収量データを活用

役員3名・従業員11名の雇用型法人(経営面積160ha、うち主食用米119ha・飼料用米等41ha)(令和元〜2年度)

従業員を雇う大規模な稲作法人が、収量を記録できるコンバインと営農管理システムを使い、田んぼごとの品種・作型の配置や人の割り振りを見直しました。高価な自動運転農機を入れずに、収量が増え労働時間も少し減り、10a当たりの利益が増えました。

導入した技術:収量コンバイン、営農管理システム(圃場別の収量・労働時間データの活用)

単収(10a当たり、作況補正済み)
422kg→467kg
総労働時間(10a当たり)
9.1時間→8.5時間(▲6.5%)
機械・施設費(10a当たり)
12.1千円→14.6千円
利益(10a当たり)
47.3千円→64.9千円

注意:慣行区は令和元年(41.2ha)、実証区は令和2年(45.6ha)の数値で、年をまたいだ比較。資料は、効率的な機械作業体制が確立している雇用型の大規模法人では、新たに自動運転系の農機を導入しなくとも、データ活用に必要な機器・システムに絞った導入も有効としている。

出典:令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)(農林水産技術会議事務局・農研機構)(2022年8月)

水稲

稲作から大豆・枝豆へ広げる経営で、ドローンや自動操舵を導入

家族5名・常時雇用8名の大規模水田作経営(水稲46.0ha、大豆50.6ha、大麦10.3ha、枝豆8.1haなど)(令和元〜2年度)

稲作中心の経営が、大豆や枝豆へ作付けを広げるために、ドローン防除や自動操舵、自動水管理などを組み合わせて導入しました。水稲・大豆の作業時間は2~3割減り、大豆の収量も上がりました。ただ、同じ期間に機械費などの経費が増え、表の上では経営全体の利益は下がっています。

導入した技術:自動運転トラクタ+自動操舵システム、防除用ドローン、自動水管理システム、自動運転コンバイン、車速連動の肥料散布機

水稲・大豆の労働時間
それぞれ約2~3割削減(水稲6,500時間→3,600時間、大豆3,300時間→2,700時間)
大豆の単収(10a当たり)
173kg→195kg(13%向上、作付面積は22%拡大)
枝豆の労働時間(10a当たり)
55.3時間→37.7時間(32%削減)
経営体全体の利益
62,873千円→51,462千円

注意:収支表では、収入は139,963千円→163,910千円に増えたが、経費が77,090千円→112,448千円(うち機械・施設費8,112千円→19,562千円)に増え、経営体全体の利益は減少している。実証前(平成30年度)と令和2年度の比較で、この間に水稲・大豆・枝豆の作付面積も拡大している。

出典:令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)(農林水産技術会議事務局・農研機構)(2022年8月)

水稲京都府亀岡市中山間

中山間の稲作で、自動給水・ドローン等を一貫導入

中山間地域で水田を担う農事組合法人(実証場所:亀岡市保津町)(令和元〜2年度)

京都府の中山間地で、田んぼの準備から収穫まで一連の作業にスマート農業の機械を入れて試しました。特に田植え・水管理・防除の時間が減り、全体で約30%の作業時間短縮になりました。自動給水で見回りが減り水位も安定しましたが、狭く形の悪い田んぼや傾斜地では効果が小さくなる面もありました。

導入した技術:営農管理システム、自動運転トラクタ(有人機との協調耕耘)、直進キープ田植機・後付け自動操舵システム、自動給水システム・水田センサー、生育診断アプリ、防除用ドローン、収量コンバイン

稲作全体の作業時間(1ha当たり)
100.7時間→71.5時間(慣行体系比0.71、2020年)
水管理の作業時間(1ha当たり)
2.1時間→1.2時間(見回り・入水時間を1ha当たり約1時間削減、2020年)
自動給水による収量
約10%増加
本田防除の作業時間(1ha当たり)
2.1時間→0.9時間(ドローンの散布時間は10a当たり1分以内)
田植えの植付精度(ズレ幅)
7.6cm→2.9cm

注意:ドローン防除は傾斜地では準備時間が多くなった(それでも従来より短時間)。手持ちのトラクタと自動運転トラクタの2台作業による耕耘時間の短縮は、別々のほ場で45%減、1haの同じほ場で34%減、10a未満の狭小な別々のほ場では22%減にとどまった。資料には導入費用や収支の評価は載っていない。

出典:中山間地域水稲栽培におけるスマート農業技術・機械の一貫体系の導入による作業支援と省力・増収・高品質化の実証(京都府農林水産技術センター・京都亀岡中山間水稲生産支援スマート農業実証コンソーシアム)(2021年3月)

畑作

畑作中山間

中山間の大豆で、小さな田を合筆しGNSSで排水対策

役員3名・従業員95名(パート、技能実習生含む)の大規模経営(経営面積861ha、大豆281ha・水稲326ha・小麦153ha・そば151haほか)(令和3年度)

中山間の小さな田んぼを何枚もまとめて大きくし、トラクターの位置情報で作った凹凸マップをもとに排水の溝を掘りました。大豆の収量が4割以上増え、経費は増えたものの10a当たりの利益も上がりました。ドローンなどの機械より、圃場の条件整備が効いた事例です。

導入した技術:緩傾斜圃場の合筆、GNSS受信機による凹凸マップ作成と溝掘りによる排水対策、収量コンバイン(別の実証区で農薬散布ドローン・リモコン草刈機も使用)

合筆後の作業効率
約2倍に向上(10a程度の圃場6~8枚を1つに)
大豆の単収(10a当たり)
132kg→187kg(42%増加)
労働時間(10a当たり)
6.85時間→6.90時間(排水対策のための追加作業を含む)
利益(10a当たり)
4.2千円→10.5千円

注意:機械・施設費は10a当たり32.6千円→37.6千円、乾燥調製料金を含む賃借料及び料金は11.2千円→16.5千円に増えた。慣行区の単収は過去5年間の平均値。ドローン・リモコン草刈機は表とは別の実証区での使用で、今後経営全体に展開するとしている。

出典:実証事例(大規模畑作(大豆) 小区画圃場を合筆し、作業効率・収量を向上)(農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果ポータル)

露地野菜

露地野菜非熟練者

ダイコン産地の法人で、自動操舵により熟練者でなくても均一作業

役員4名・常時雇用28名の農業法人(経営面積90ha、ダイコン22ha・キャベツ24haなど)

ダイコンの栽培で自動操舵トラクタを使ったところ、熟練者でなくても肥料などを均一にまけ、まっすぐ播種できたため後の除草作業も大きく減りました。自動収穫機と合わせて作業時間は約3割減り、収量も増えて、機械代を差し引いても10a当たりの利益は増えました。

導入した技術:自動操舵トラクタ、自動収穫機、マルチローター、アシストスーツ、営農支援システム

中耕除草の作業時間(10a当たり)
1.62時間→0.22時間(対慣行-86%)
全体の作業時間(10a当たり)
50.46時間→36.49時間(対慣行-28%)
単収(10a当たり)
4,112kg→5,112kg(対慣行+24%)
利益(10a当たり)
30千円→81千円

注意:機械・施設費は10a当たり18千円→36千円に倍増し、収量増に伴い流通経費も168千円→209千円に増えた。それでも償却を差し引いて利益は増えたとされる。資料は、機械の他品目への利用拡大や規模拡大で減価償却費を下げれば、さらに利益拡大が期待されるとしている。

出典:実証事例(ダイコン 自動操舵トラクタ・自動収穫機による作業効率性の向上)(農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果ポータル)

露地野菜

キャベツ法人で、営農管理システムと自動化機械を導入

役員3名・常時雇用10名・臨時雇用26名の農業法人(経営面積75ha、キャベツ延べ100ha・六条大麦20haなど)(令和2年度)

キャベツの法人が営農管理システムで作業の進み具合や作業時期を管理し、経営者の管理の手間を減らして営業に時間を回したことで、単価と販売収入が上がりました。自動操舵や全自動収穫機で労働時間も4割減りました。しかし機械のリース料や償却費が大きく、実証した小さな面積では10a当たり大幅な赤字でした。

導入した技術:作業時期を指示する機能付きの営農管理システム、QRコードによる苗管理、自動操舵トラクタ、GPS連動施肥中耕機、キャベツ全自動収穫機

販売収入(10a当たり)
155千円→214千円(38%増加、単価57円/kg→81円/kg)
総労働時間(10a当たり)
45.49時間→27.33時間(40%削減)
経費合計(10a当たり)
156千円→346千円(年間延べ40ha活用時の試算182千円)
利益(10a当たり)
18千円→-110千円(年間延べ40ha活用時の試算54千円)

注意:賃借料(全自動収穫機等)が10a当たり7千円→99千円、機械・施設費が16千円→91千円に増え、10a当たりの利益は赤字になった。資料はスマート農機を導入した面積が小さかった(実証面積キャベツ延べ3.8ha)ためとし、目標面積の年間延べ40haまで拡大した場合は利益が実証前を上回ると試算している(試算値であり実績ではない)。数値は春秋2作の平均値。

出典:実証事例(キャベツ 営農管理システムによる経営者の管理業務軽減、自動収穫機等による作業時間削減)(農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果ポータル)

露地野菜青森県非熟練者

ナガイモ栽培で、非熟練者が自動操舵で熟練者並みに作業

青森県産業技術センター(野菜研究所)による実証試験。非熟練者・熟練者の作業を比較

ナガイモの耕起と収穫で、慣れていない人が自動操舵トラクタを使うと、耕起は熟練者とほぼ同じ時間で精度はむしろ高く、収穫は熟練者より短い時間で作業できました。ただしトラクタごと新しく買うとナガイモだけでは採算が合わず、手持ちのトラクタに自動操舵だけを後付けする方法なら元が取れる計算です。

導入した技術:自動操舵トラクタ(トレンチャー耕起・収穫作業)、既存トラクタへの後付け自動操舵システムの経済性評価

トレンチャー耕起の作業時間(100m当たり)
自動操舵・非熟練者20分29秒(手動・非熟練者21分15秒、手動・熟練者20分03秒)
収穫作業の作業時間(100m当たり)
自動操舵・非熟練者32分40秒(手動・非熟練者45分45秒、手動・熟練者39分55秒)
トレンチャー耕起の作業精度
自動操舵・非熟練者が手動・熟練者より高かった
最大作業可能面積-損益分岐点面積(年間)
自動操舵+トラクタ導入:耕起-6.9ha・収穫-0.7ha/自動操舵のみ導入:耕起1.3ha・収穫4.0ha

注意:自動操舵トラクタを新たに導入する場合は、ナガイモの作業だけでは最大作業可能面積が損益分岐点面積を下回り、他作目の管理作業にも利用するなどが必要とされた。既存のトラクタに自動操舵システムのみを導入する場合は、損益分岐点面積を上回り導入効果が期待できるとしている。いも部の折れの発生は試験区による差がなかった。

出典:ナガイモ栽培における自動操舵トラクタの有効性の実証(地方独立行政法人 青森県産業技術センター)(2024年3月)

施設園芸

施設園芸雇用者

施設きゅうり:養液栽培とデータ活用で単収増

きゅうり単作52.5a(うち養液土耕40.5a・養液栽培12a)、家族3名+常時雇用14名(平成30年(慣行)→令和2年(実証))

養液栽培を新たに入れ、温度・湿度や作物の生育データを見ながら細かく環境を調整した結果、単収と利益が増えました。一方で、作業時間はむしろ増えており、「楽になる」より「たくさん穫って稼ぐ」方向の事例です。得られたデータは新規就農者を含む産地の生産者と共有されています。

導入した技術:人工培地の養液栽培、ハウス内の温湿度データと植物の生育データにもとづく環境制御、労務管理システム

単収(農場全体)
31.7トン → 36.2トン(10a当たり)
利益(10a当たり)
-243千円 → 432千円(約67万円増)
労働時間(10a当たり)
3,309時間 → 3,854時間
機械・施設費(10a当たり)
906千円 → 1,151千円

注意:利益の増加には市況変動の好影響もあったと出典に記載。10a当たりの労働時間・労働費(単価1,500円/時間で計算)は増えている。労務管理システムによる人員配置改善は「今後見込まれる」段階。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 施設園芸の分析結果「実証事例(施設きゅうり 環境・生育データを活用した高度な栽培管理)」

施設園芸雇用者

施設なす:JA部会でデータとコツを共有

ナス単作127a、家族4名+常時雇用9名(JA部会員)(平成30年(慣行)→令和2年(実証))

単収の多い農家の栽培記録をもとに水やり・肥料の管理指針をつくり、チャットツールで部会員に共有しました。各自が管理を見直した結果、部会員の平均販売収入が7%増えています。出典は、ソフトウェア中心の技術は農業者が簡単に取り組めるとしています。

導入した技術:生産情報管理システム、営農管理システム、農業用チャットツール、出荷予測ソフト、AI搭載の自動給水・施肥システム

部会員の平均販売収入
7%増
単収(10a当たり)
18.4トン → 21.4トン
利益(10a当たり)
-72千円 → 658千円(約73万円増)
労働時間(10a当たり)
1,514時間 → 1,438時間

注意:単収増大に加えて市況変動の好影響もあったと出典に記載。その他費用の増加は老朽化したハウス天井資材の張替え(+973千円/10a)による。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 施設園芸の分析結果「実証事例(施設なす JA部会員間での優良経営体のデータの共有と活用)」

施設園芸茨城県常陸大宮市中山間

中山間の直売いちご:低コスト環境制御と需要予測

直売型イチゴ経営(中小規模パイプハウス、実証面積10a)(令和2〜3年度作)

中山間地の小さなパイプハウスで、必要な部分だけを自動化する安価な環境制御と自動かん水を使い、収量を3割以上増やしました。さらに道の駅などの売れ行きを予測して高く売れる販路へ回し、単価も上がっています。ただし機器の設定は難しく、最初は専門家の支援が必要とされています。

導入した技術:低コストな環境制御(自動換気・CO2施用・クラウン冷却)、AI養液土耕による自動かん水、画像による生育の自動測定、直売所・道の駅の集客・需要予測、アシストスーツ

可販果収量(10a当たり)
4.2t(慣行区・H30年度作)→ 5.7t(R2年度作)
販売単価
22%向上(R2年度作、H30年度作対比)
アシストスーツによる作業時間
年間5.14%減(10a当たり129時間短縮)
収益性(所得)
慣行区比278%(R2年度作)、255%(R3年度作)

注意:環境制御機器は設定に一定のハードルがあり、導入初期にメーカーや指導機関のサポートが必要。自動かん水は土質に応じた目標土壌水分の微調整が必要で、初年度は稼働状況に注意。アシストスーツは調整が不十分だと効果が不安定で、背面ベルトが直射日光で高温になる。収穫の時短効果は1人当たり収穫量が多い2月以降に限られた。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【施2C01】直売イチゴ経営におけるスマートフードチェーン構築によるデータ駆動型高収益経営体系の実証

施設園芸熊本県阿蘇市

阿蘇のいちご:増収したが所得増は2%程度

JA阿蘇いちご部会委託部(実証面積37.3a)、共同選果施設を含む(令和元〜2年度)

CO2を株の近くに効率よく施すことで増収と灯油の節約を実現しました。ただし品種「恋みのり」の経営比較では販売額はわずかに減り、農業所得の増加は2.1%にとどまっています。選果ロボットは操作できる人材の確保が課題とされました。

導入した技術:株元へのCO2局所施用、ハウス内環境・排液のモニタリング、画像による生育・収量予測、スマホでの情報の見える化、選別・パック詰めロボット

局所CO2施用による増収
16%(恋みのり、5月末まで)
CO2施用の灯油使用量
30%以上削減(3月末まで)
収益性(恋みのり、対照区比)
販売額1.0%減、経営費0.8%・労働費0.3%減、農業所得2.1%増
収量予測精度
10日前予測で平均75%(目標80%)

注意:選別・パック詰めロボットは産業用ロボットアームを使うため、操作教育を受けた人以外は操作しない前提で、使いこなす人材の確保が課題とされた。安価に導入できる装置の開発や、安価な通信ネットワークの構築も課題に挙げられている。局所CO2施用システムは自家施工で40万円程度。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【施H06】促成イチゴ栽培における圃場内環境および作物生育情報を活用した局所適時環境調節技術による省エネ多収安定生産と自動選別・パック詰めロボットを活用した調製作業の省力化による次世代型経営体系の構築

果樹

果樹大阪府柏原市女性

大阪のぶどう:ドローンやアシストスーツの得手不得手

JA大阪中河内ぶどう栽培同好会、ブドウ2.26ha(ハウス・露地、傾斜地を含む)(令和2〜3年度)

自動換気でハウスの労働時間が2割減り、腕を上げる作業用のアシストスーツは体力のない女性スタッフから高い評価を得ました。一方で、ドローンは飛行できない場所や傾斜地での制約があり、記録アプリは忙しくて入力できないなど、現場では使いこなせない技術もありました。

導入した技術:ハウス温度の遠隔監視と自動換気、ドローンの空撮画像による生育診断と追肥散布、アシストスーツ、ラジコン草刈機、クラウド型の作業日誌

単収
3.6%増加(目標5%)
収穫時期
7日前進(目標10日)
労働時間
ハウス22%削減、露地11%削減
追肥散布時間(10a当たり)
ドローン2分35秒、手散布16分38秒
腕上げ作業用アシストスーツ
作業時間11%短縮

注意:空港隣接地域や高圧電力線の影響でドローンが飛べない圃場があった。傾斜した圃場では自動航行の設定ができず省力化にならず、ドローン専用肥料が必要で肥料の選択肢が限られた。重量物運搬用アシストスーツは棚下や狭い倉庫で使いづらく実用化困難と評価。ラジコン草刈機は燃料費が増え、溝や凹凸のある圃場では使えない。農繁期の経営主は毎日14時間程度働いておりクラウド日誌を記帳する余裕がなく、事務局が代行入力したため期待した省力化につながらなかった。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【果2F04】スマート農業技術によるデラウェア栽培の省力化・高品質化と大粒ブドウ品種導入拡大

果樹愛媛県八幡浜市

急傾斜のみかん産地:気象データで水管理

JAにしうわスマート農業研究会(かんきつ26.8ha、うち実証1.3ha)(令和元〜2年度)

急な斜面のみかん園で気象や土壌水分のデータを集め、水やりや肥料の時期と量を調整した結果、労働時間の削減と増収、高級品種の裂果減少につながりました。ただし反収は目標に届かず、アシストスーツは歩く作業ではかえって動きにくいなど、向き不向きがはっきり出ています。

導入した技術:園地の気象・土壌水分モニタリング機器、マルチ・点滴かん水と施肥の最適化、アシストスーツ、AIによる選果機、経営・栽培管理システム

温州みかんの労働時間(10a当たり)
180時間(県経営指標)→ 実績126.2時間
温州みかんの平均反収
5.7t → 6.55t(目標6.84t)
単収
温州みかん14%増、甘平32%増
甘平の裂果率
25% → 16%

注意:アシストスーツは資材運搬時の動きやすさ・歩きやすさでは逆効果だった(選果・出荷での荷物の持ち上げには効果が高い)。AI選果機は品種によって生傷の判別精度が低く、品種ごとのデータ蓄積が必要。園地ごとに条件が異なり一律の指針作成は困難。継続実証のランニングコスト確保も容易ではないとされた。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【果G08】未来型柑橘生産に向けたAI等先端技術の導入によるスマート営農体系の実証(JAにしうわスマート農業研究会)

果樹長崎県長崎市

長崎びわ:ドローン防除で時間9割減、目標は一部未達

JA長崎せいひ長崎びわ部会(びわ150ha)(令和2〜3年度)

高齢化が進むびわ産地で、ドローン防除により防除時間を9割以上減らし、手で散布するのと同じ程度に腐敗果を抑えました。糖度を保証したブランド品は高値で売れた一方、出荷割合や出荷量の目標には届いていません。傾斜地では通信の確保が難しいという制約も報告されています。

導入した技術:ドローンによる防除と収穫果実の運搬、低コスト通信の気象観測と収穫期・出荷予測、圃場管理システム、糖度・内部腐敗を判別する選果システム

ドローン防除
防除時間を9割以上削減、腐敗果の抑制は手散布と同等
選果・出荷作業
全労働時間515h/10aのうち55h/10a(10.7%)を代替
ブランド「特選」の出荷割合
2.5%(目標5%以上)
「特選」の単価
4,500円/kg(レギュラー品平均単価1,404円の3倍以上)
部会の出荷量(令和3年産)
262t(目標500t、寒害の影響)

注意:海岸から山までの狭い傾斜地が多く、時間帯によってはGNSS等の通信確保が難しく、ドローンの円滑な飛行に制約があった。出典は、ドローン防除用農薬の登録申請を製造企業と協力して進めるとしている。農福連携は新型コロナの影響で十分に取り組めなかった。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【果2H08】びわの品質を保証する生産から出荷までのスマート農業技術の実証と農福連携の推進

果樹島根県出雲市新規就農者

島根のハウスぶどう:自動化と新規就農者向けVR

大社観光ぶどう園ほか(実証74.1a:ハウス制御自動化65.1a、VR学習9a)(令和2〜3年度)

ハウスの換気や水やりを自動化して早出しが進み、シャインマスカットの単価は大きく上がりました。ただ、作業が集中して経営全体の労働時間は5%増えています。熟練者の技をVRで学ぶ新規就農者向けの研修では、秀品率は上がったものの目標には届いていません。

導入した技術:ハウス環境モニタリング、側窓の自動開閉、かん水同時施肥(養液土耕)、農作業日誌アプリ、熟練者の技術をVRで学ぶ学習システム

シャインマスカットの単価
1,880円 → 3,426円/kg(82%アップ)
デラウェアの単収
1,265kg → 1,127kg
労働時間
5%増(デラウェア18%減、シャインマスカット29%増)
新規就農者の秀品率(VR研修後)
赤秀品率0% → 0.5%(目標30%アップに届かず)、赤秀+青秀22.1% → 36.4%

注意:生育が想定以上に進み、作型間でジベレリン処理の時期が重なって十分な作業ができない事態が生じた。側窓自動開閉は期待した重油削減につながらなかった。使った農作業日誌アプリは水稲向けで、施設園芸では入力に時間がかかり使いにくかった。VR研修の活用回数も目標を下回った。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【果2G06】「ハウス環境自動制御による加温栽培ぶどうの栽培・販売体系改善」及び「ぶどう栽培匠の技を次世代に継承するためのVR学習システム開発」の実証

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